禍は口より出て身をやぶる

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 腹が立ったり、文句の一つもいいたくなったり、
そんなことは日常茶飯事でしょう。そんな時皆さん
は言いたいことを言ってしまう方でしょうか。それ
ともぐっと耐えて、これは言ってはいけない事と分
別する方でしょうか。
 先日、お寺にある熟年の女性が訪ねてこられて世
間話を色々としておりました。その中で、
 「私何でもボンボン言うねん。腹立ったら誰にで
もぼろくそ言うたんねん、せやけど私は後残らへん、
言うたらそれで終わりやさっぱりしたもんや。」
 呆気にとられました。
 「おばちゃん、言うた方は言いたいことを言って
さっぱりして終わりかもしれへんけど言われた方は
それから一生覚えてるで。」
 おまけにその女性は、
 「わたし他人からとやかく言われるの大嫌いや、
ちょっと言われたら腹立って腹立って。」
とまで言うのです。言いたいことを言って、他人か
らとやかく言われるのは嫌い、誰でもそうです。そ
んなふうに平気で振舞えたら、みんながさっぱりす
るでしょう。でも、あちらこちらで喧嘩やもめ事も
絶えないでしょう。多くの人は言いたい事を言わず
に我慢することの方が多いのではないでしょうか。
        おもすどのにょうぽうごへんじ
日蓮聖人のお手紙「垂須殿女房御返事」の中で、
 禍(わざわい)は口より出て身をやぶる
 幸(さいわい)は心より出て我をかざる

とあります。いくら人のお世話をしていても、いく
ら人に親切にしていても、いくらよい話をしていて
も、たった一言で取り返しのつかないことになる。
せっかく積み上げた善根が一言で無に帰ってしまう。
無に帰すだけならまだしも、恨みを買ったり、よけ
いな災いをもたらす。反対に、なにも言わなくとも
善い行いや豊かな心で生活を送っていると、なにか
しら自分自身を輝かせてくれる。
 お寺に来られた女性も何かと周りの人の世話をし
ていらっしゃるのに、一言多くなければいいのにと、
思ってしまいます。
 いままでにこのような人と何人かお話ししたこと
がありましたが、ほとんどの人が悪びれる様子もな
く、まるで良いことをしているかのように話をされ
ます。その上、言うだけ言って後は根に持たないと
いうのを自慢げに話されるのです。
 でも、よくよく考えてみると、これらの人ほどで
はなくとも、私自身も何かの一言で他人を傷付けた
り、不愉快な思いをさせている事も毎日の生活の申
で多いのかもしれません。気付かぬ一言が取り返し
のつかない事を招くこともある。僧侶という立場に
あり何かと多くの人と会話をする事の多い私自身を
振り返ってみても、よくよく心しなければならない
事と反省した出来事でした。皆様も一度思い当たる
節がないか振り返ってみてください。そして、お気
をつけください。

 

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