なまぐさ坊主の真面目な闘病記⑥ー僕は鶯じゃない!

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 手術をした際に入院は2週間程度と言われていた。それが23日間も入院を強いられたのは、おそらく喉頭蓋が菌に冒されて麻痺してしまったのが原因なんだろうけど、嚥下機能が上手く働かなくなってしまったからだ。食べ物を飲み込もうとすると、これが気管のほうに入って行こうとして、誤嚥性肺炎を起こしかねない。ということで、食事テストが終わった翌日の10日から摂食機能療法が始まった。言語療法士のR・Fさんの指導で、まず首を上下左右に動かす運動から。続いて舌の運動。舌を出したり引っ込めたり、舌を左右に動かしたり。さらに、ほっぺたを膨らます運動。


 さあ、今度は声を出す運動。「ア~~~~」と、なるべく長~く声を出す。次に低い音から高い音に変化させたり、逆に高い音から低い音へ。続いて歯切れ良く、「パパパパパッ」「タタタタタッ」「カカカカッ」「ラララララッ」。これをパタカラ運動というらしいけど、こんなことを20~30分も続ける。馬鹿馬鹿しくてやってられないけど、これをやらないと飯が食えないと思うと必死だ。

 リハビリを続けること8日。ついに5月17日の昼食から食事を摂れることになり、8日間入れていた鼻のチューブを抜いた。5月1日の夕食を食べて以来、何と16日ぶりの食事だ。だけど、主食の重湯はいいとして、おかずの形が無い。全部ピューレになっている。口に入れると何となく味で元の姿を思い浮かべることは出来るが、これじゃ鶯の練り餌だ。僕は鶯じゃない!でも、そんな贅沢は言っていられない。食べられるだけでも幸せじゃないか。僕はベッドに正座して食事をいただいた。有り難くて、自然と涙がこぼれて来る。

 嚥下食は2日で卒業し、19日の昼食から形のあるおかずになった。ただし、主食は五分粥。翌日には全粥に昇格したが、普通のご飯が食べられるようになったのは、もっともっとあと。リハビリをさらに続けることさらに5回。5月24日午後に食道造影検査を行ってOKが出たあとの24日夕食からで、結局病院で普通のご飯を食べたのは2回だけだった。

 こうして次第に食事は摂れるようになったものの、水分に関してはとろみがないと許してもらえず、ペットボトルのお茶にとろみをつけて飲まなければならない。とろみのついた水やお茶ほど不味いものはない。暑いときだから、冷たい水をぐびぐびと飲みたいけど、それが出来ない。案外これが一番辛かったかもね。(つづく)

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