「心はどこにあるのか」
ある人は左胸を指差し、ある人は頭の中にあると言う。
感動した時は体全体がジーンとするから、心は全身に宿るという考え方もあるし、
一方で、心なんて人間が仮定したもので、本当は存在しないという考え方も一理あろう。
大学で心理学を専攻した私は「心はきっとどこかにある」と考えた時期があった。
しかし学びを深めるにつれ、心の所在は単純に割り切れる問題ではないと実感するようになった。
最終的には「身体と環境の相互作用により生じるもの」と捉えるようになったが、
仏教を学び、十界互具と十如是の教えに触れたとき「ああ、そうか」と腑に落ちた。
人の心は、環境や関係の中で刻々と変化する。
その時々の心持ちが行動を生み、結果となって現れ、さらに次の心の種となる。
つまり、心はどこかに固定されたものではなく、常に「はたらき」として存在しているのだ。
大切なのは「心がどこにあるか」ではなく「どうはたらくか」。
良いはたらきをするよう、日頃から心を整え、磨いていきましょう。
【本遠寺 伊藤友範】