今月のおはなし 第18回

 寒い冬の時期、寺院やお仏壇に祀られる日蓮大聖人のご尊像には「綿帽子」が掛けられますが、これは11月11日「小松原法難」で東条景信に切り付けられ、眉間に三寸程の疵を負ったことに由来します。額に深い疵を負い、身を隠していた大聖人の姿を見かけた「お市尼」という老婆が、自らがかぶっていた綿を大聖人に差し上げたと言います。今でも寒い季節になると大聖人が眉間に受けた疵が寒い冬に痛まないようにと日蓮宗寺院や各家庭のお仏壇では大聖人のご尊像に綿帽子をお掛けするのです。このように私たち日蓮宗徒は750年以上経った今でも、今まさに生きた大聖人に接する思いでご給仕させていただいているのです。また私たちは現代の「お市尼」となり心身に辛い思いをされている方にも手を差し伸べられるよう努めなければなりません。
綿帽子をお掛けする時期は、地域・寺院によって異なりますが、大聖人が寒いとお感じだろうと思えばお掛けして、暑くて蒸れるとお感じだろうと察すれば綿帽子をおとりするのが最適解なのではないでしょうか。生きる大聖人に接する思いで。
【圓乗寺 服部巧顕】

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