今月のおはなし 第13回

 伝統的な日本の音楽の一つに「雅楽」がありますが、この音楽は洋楽譜には表すことのできないことがたくさんあります。
 日本という国にはリズムを超えた「間」というものが存在し、この「間」は時間的なものと空間的なものを同時に持っている不思議な感覚です。そこには「魂」「心」を留め置く力があります。
 音楽に限らず人との会話に於いてもこの「間」をうまく使う事で、言葉では表現し切れない「心」を伝えることが出来ます。一定のリズムに乗せているよりも理解しやすくなるのは不思議な事です。機械にはこの「間」を教えても理解することが出来ないでしょう。
 この「間」という感覚は、自分の心が騒めいているときには少なくなったり無くなったりします。落ち着いて心豊かな感覚を持った時に緩やかにリズムの中に溶け込んできます。逆に意識して「間」を取ることによって自分を落ち着かせることもできます。心を落ち着けて遠くの景色をそこに溶け込ませるような感覚でしょうか。近年は音楽も言葉もどうも機械化しているように感じます。忙しく時が流れていく時代だからこそ日本独特の文化を失わないようにして、心豊かに居られるようにしたいものですね。

【光耀寺 大原廣昭】

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