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照法山 本久寺

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八正道:正しく語ること(正語)

正語(しょうご)とは、正しい言葉を使うことです。場合によっては、この正語は、言葉に関わる四つの悪を離れることとされます。その四つとは、1.嘘をつくこと(妄語)、2.無益で飾り立てるような言葉(綺語)、3.人の仲を裂く言葉(両舌)、4.粗野な言葉(悪口)を言います。
 
言葉というものは、何かを指し示すものですから、その何かとは必然的に別のものとなります。よって本質的に、言葉には四つの悪(妄語・綺語・両舌・悪口)のもととなる、実際の物事とのかい離という要素が入っています。
 
言葉の起源に関しては、諸説が紛糾し、1866年にパリの言語学会がその論争を禁止したほどです。もとは哲学的な考察が主でしたが、近年、様々な分野から研究がなされるようになってきています。
その中で、進化生物学者のロビン・ダンバーは、言葉は噂(ゴシップ)によって発生したという仮説を唱えています。噂話には、集団の中でお互いの立ち位置を確認する機能があり、これは霊長類の「毛づくろい」から発展したものだというのです。*1
 
噂は、そこにいない他者の評価を行うことにより、かえって噂話をしている当事者の集団内での評価を暗に示唆します。それが「陰口」としてネガティブに受け止められるのは、噂が波及するにつれ、噂の対象のみならず、噂をしている自分の立ち位置も裁かれていくという、実行力があるからと考えられます。
見ず知らずの有名人についての噂はほとんど気に留めないのに対し、職場や友人関係での噂話には慎重になると同時に、かえってたまらなく興味が掻き立てられるのは、噂にそのような諸刃の剣としての性質、すなわち恩讐としての返報機能があるからと言われます。*2
 
このような集団内のコミュニケーションの在り方が、言葉の起源にあるとすれば、四つの悪(妄語・綺語・両舌・悪口)を抑止するということは、言葉本来の機能を制限しようとするのだとも言うことができます。「正しい言葉」は仮想のものとしての言葉の危うさを認識し、その危険性を中和していこうというものでしょう。
 
ただ厄介なことは、わたしたちは日常ほとんど意識して言葉を使っていないということです。脳科学者のチャールズ・リベットによれば、人間の意識は、その意識を準備する脳の行動開始から、約0.5秒後に現れると言います。すなわち、ある考えが意識に浮かぶ前に、それを考えるための脳の電位活動がそのような考えを抱くようにすでに準備を行っているのです。*3
言葉を意識する前に、すでにその言葉を使うよう無意識的に準備している、ということなら、正しい言葉を発しようと自分ではコントロールができないことになってしまいます。よってとりわけとっさの反応であれば正しい言葉を使うことが難しくなります。
 
実際に、釈尊は「これまでに好ましくない言葉を使い、人を傷つけたことはないか」と問われ、「それは一概に言えない」とまで答えています。*4
これは悪口と受け止められかねない耳障りな言葉であっても、その人に有益な言葉があるということを意味します。それに続けて釈尊は、なぜそのようにしてでも人々に語りかけるのかについて、
「なぜかというと、如来は生きとし生けるものに対して愛情を持っているからである。」
とおっしゃっています。*5
 
言葉の発生やその虚構としての性質いかんにせよ、たぶん「何々はいけない」という制限だけでは、正しい言葉を人に語りかけるまではいかないと考えます。
 
それは四つの悪(妄語・綺語・両舌・悪口)を離れようと思う時、人は相手ではなく自分のことを考えてしまうからです。自分が「正しく非難されない人間」になりたいのです。そしてそのような態度が、自分の心を形作っていくものなら、正語は「自分の不利益になることは語らない」と言い換えられることになってしまいます。
 
時として好ましくない言葉も使うという、釈尊はそれとは実際、全く反対のことを言っています。
人々、周りの人々に対する深い愛情、それを日々育んでいくことこそが、自然と自らの態度と言葉をそのような正しい在り方に導いていくのではないでしょうか。
 
 
*1 ロビン・ダンバー「ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ」
*2 ジョナサン・ハイト「しあわせ仮説」
*3 トール・ノーレットランダーシュ「ユーザーイリュージョン」
*4 南伝大蔵経:中部:無畏王子経
*5 ベック「仏教」

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