真綿色したシクラメンほど
清しいものはない
「シクラメンのかほり」作詞・作曲:小椋佳
昭和五十年のヒット曲に、布施明が歌った「シクラメンのかほり」がある。この曲を書いた小椋佳は、歌詞は北原白秋の詩と、エルヴィス・プレスリーの歌からの「借り物」で作ったものだと後に告白して、当初にはこれほどヒットするものとも考えていなかったという。
言葉や文章で表現するものは、それ以前からある言葉・文字を用いる。私たちが発する言葉は、そのほとんどが「借り物」なのである。しかし、その組み合わせ、用い方によって多彩な表現を可能とする。言葉に新たな意義、命を吹き込むことも不可能ではない。
そして借り物の言葉から生まれたものが、人の心を動かすことがある。「シクラメンのかほり」はその好例ではなかろうか。
私たちの肉体も、目にする全てが「借り物」であり「仮のモノ」。その仮のモノの中に、真理・真実が現れることを知るのである。