つまづいたっていいじゃないか

つまづいたって いいじゃないか にんげんだ もの

日本人でこの言葉を知らない方が何人いるだろうか。
書家であり詩人である「相田みつを」(以下敬省略)の有名すぎる言葉である。

私達研修生は布教研修所のカリキュラムの一環で、東京国際フォーラム地下一階にある「相田みつを美術館」へ行き、相田一人館長にお話をして頂いた。
あの相田みつをの実の息子にあたる方から直接お話を聞くことができる。
・・・なんて贅沢な時間なのだろう。

館長相田一人さんと

相田一人館長は、父:みつをの一部の作品だけが凄く有名になっている反面、他の良い作品があまり知られていないことが残念であると仰っていた。
・・・確かに私も「つまづいたって」以外の作品についてはほとんど知らなかった。

だが!今回、美術館に展示されている作品を見て、館長の話を聞いて、心に残った作品が二つあった。
「花を支える根」「ひとりぼっちのつばめ」である。

花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根はみえねんだ なあ

館長はこの作品にみつをの根っこ観、基礎を大切にしている心が如実に表れていると話す。

相田みつをの作品と言えば、少し不揃いなひらがなを多用して書かれたものが多い。
しかし、みつをは若き時に書家を志し、中国の臨書(お手本を見ながら書くこと)を徹底的に習い、コンクールで受賞するほどの腕前であったという。
(美術館には実際に書の作品が展示されており、本当に上手だった)

ところが自らの書を探求する中で、「自分のコトバで書きたい!」思いが強くなり、その思いを成すためには中国の伝統的な文字では雰囲気が合わないことに気が付く。その結果辿り着いたのが、今も残る書体の作品である。

つまり、あの文字はちょっとやそっとの努力でできたものではなく、それこそ長い時間かけて練り上げていった努力の結晶といえる文字なのである。

館長からその話を聞いた後に「花を支える根」を見ると、その作品からみつをのただならぬ思いが溢れ出ているような気がし、一気にお気に入りになった。

余談だが館長曰く、来館者の中には「いい言葉なんだけど、もっと字が上手かったらなぁ」という感想を漏らした方がいたそうだ。
もし、もし「つまづいたって」の作品がビシィっと揃った綺麗な楷書で書かれていたら・・・・・・

私達僧侶の役割の一つに、お釈迦様や日蓮聖人の教えを人々に伝えるということがある。
一般に「法話」とも言われる、その話の中で相田みつをの作品はたとえ話や話へ関心を持ってもらうためによく引用させて頂いている。
今回お話して頂いた、実際にみつをの創作現場を見てきた館長による作品を作るにあたっての裏話や、父親としてのみつをの素顔などのお話は、ネットや書籍、テレビで作品をただ見るよりも何倍も何万倍もリアルなものとして身に染みた。

相田一人館長、御多忙の中、この様な機会を作って頂き、誠に有難う御座いました。

皆様もぜひ、足をお運びください!!

一覧へ