LINE法話「素直」

おはようございます。

現在、NHKのBSプレミアムでは連続テレビ小説「あまちゃん」が再放送されています。朝ドラ「あまちゃん」は、今から10年前、「じぇじぇじぇ」という言葉とともに、社会現象を起こすほどヒットしました。
「あまちゃん」の主人公は、天野アキという名前の女子高生です。彼女は、暗くて地味な性格で、東京では周囲に馴染むことができませんでした。

ところが、岩手県北三陸に移住して、様々な人々と出会い関わるなかで、海女として明るく働くようになります。物語の後半、アキは親友のユイからの誘いもあり、アイドルを目指すために北三陸から東京に戻ることになります。

東京へ向かう電車に乗る際、アキは、母親の春子に「私、変わった?」と聞きます。春子は、「変わってないよアキは」と答えます。「昔も今も、地味で暗くて、向上心も協調性も存在感も個性も華もない、パッとしない子だけど。だけど、みんなに好かれたね!こっちに来て、みんなに好かれた。あんたじゃなくて、みんなが変わったんだよ!自信持ちなさい。それはね、案外凄いことなんだからね!」

春子の言葉は、とても心に響く台詞です。アキは東京にいた頃と北三陸での生活とでは、明るさが全然違います。実は、春子も、アキが明るくなったと周囲に漏らしていました。

明るくはなりましたが、アキは成長して変わるというよりも、ますますアキらしくなっています。そういう意味では変わっていません。しかし、アキは人々とかかわるなかで自分を見つけて、さらに周囲を変えました。自分を見つけて受け入れられたことは、彼女にとっての大きな変化です。それが周りを変える原動力になったのです。

お釈迦様は、法華経の中で「質直にして意柔軟に 一心に仏を見たてまつらんと欲する」
「質直意柔軟 一心欲見仏」と説かれております。

心が素直で柔軟であれば、仏様の世界へ行くことができるという意味です。
ここでいう素直とは、どういうことでしょうか?学校や会社では、人の言うことを素直に聞きなさいと言われます。もちろん、これは大切なことです。法華経に当てはめるならば、仏様の教えを素直に聞きなさいということでしょう。

しかし、他人の言うことを素直に聞くのは、意外に大変なことです。「私はこうしたい」と思うこともありますし、「どうせ自分なんかが仏様の教えを聞けるわけがない」と思うこともあるでしょう。
ですから、まずは自分に素直になることが大切です。これは、自分の思い通りに振る舞い、我が儘に生きて良いということではありません。

自分に素直になる。とは、自分自身の良いところも悪いところも受け入れること、認めることです。自分自身のありのままを受け入れることで、良いところは自信を持ちつつ、足りないところは他人の意見に従って成長していこうと思うものです。そしてなにより、自分自身を受け入れることで、生きやすくなります。

『あまちゃん』でアキが自分自身を受け入れられて周囲に溶け込めたように、私達もまずは自分自身を受け入れる、素直になることが大切です。どんな人にも良いところ、悪いところがあります。時に自分の悪いところだけを見て自信を失うこともありますが、自分の良いところも見て自信を持って、「私は私」と認めていきましょう。

それが仏様の教えに従うための第一歩です。

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