お彼岸に六つの修行を ー 六波羅蜜 ー

秋のお彼岸に入りました。
今年は台風の影響もあり、「お墓参りに行きたかったけれど、今日は難しそうだな」という方もいるかもしれません。
でも、そんなときにも、お彼岸だからこそ取り組んでいただきたい仏道修行があります。
それが、六波羅蜜(ろくはらみつ)です。

お墓やお仏壇に手を合わせ、ご先祖さまを偲ぶこととともに、自分自身の生き方にも目を向けてみる。
六波羅蜜は、そんなお彼岸の過ごし方にぴったりの教えです。

「彼岸」って、どこにある?

仏教では、私たちが生きている迷いや苦しみの世界を「此岸(しがん)」、そこから離れた悟りの世界を「彼岸(ひがん)」と呼びます。
つまり「彼岸」とは、単にあの世を指す言葉ではありません。
怒ったり、欲張ったり、誰かと比べて落ち込んだり。
そんな煩悩に振り回されている私たちが、少しでも穏やかな生き方へと歩んでいく。
そのための六つの実践が、六波羅蜜です。

一、布施 ― 人に与える

「お布施」というと、お寺に納めるお金を思い浮かべるかもしれません。
でも、本来の布施はもっと広いものです。
たとえば「和顔施(わがんせ)」。
穏やかな顔、やさしい笑顔で人に接することも、立派な布施の一つです。
笑顔で挨拶をする。
優しい言葉をかける。
困っている人に手を貸す。
お金がなくても、人に渡せるものはたくさんあります。

二、持戒 ― 自分の行いを整える

約束を守る。
人を傷つける言葉を使わない。
自分勝手な振る舞いを慎む。
誰かに怒られるから守るのではなく、自分自身の生き方を整えること。
それが持戒です。

三、忍辱 ― 感情に振り回されない

「にんにく」と読み、耐え忍ぶことをいいます。
腹が立ったとき、すぐに言い返さない。
思い通りにならないとき、一度立ち止まってみる。
何でも黙って我慢するということではありません。
怒りや不満に自分自身がのみ込まれないようにする。
それも一つの修行です。

四、精進 ― 少しずつ続ける
大きなことを成し遂げることだけが精進ではありません。
今日やるべきことを、今日やる。
昨日できなかったことを、もう一度やってみる。
一歩ずつでも歩みを止めないこと。
その積み重ねが精進です。

五、禅定 ― 心を静かにする

私たちの頭の中は、朝から晩までさまざまなことでいっぱいです。
スマートフォンを置いてみる。
静かに手を合わせてみる。
ほんの数分、自分の呼吸を感じてみる。
忙しい毎日の中で、心を静める時間を持つ。
それが禅定につながっていきます。

六、智慧 ― 物事をありのままに見る

そして六つ目が、智慧です。
仏教でいう智慧とは、単に知識が多いということではありません。
自分の思い込みや感情にとらわれず、物事をできるだけありのままに見る力です。
自分の見方だけが正しいと思い込んでいないだろうか。
相手には相手の事情があるのではないか。
そうやって一度立ち止まって物事を見る。
そのために、布施をし、行いを整え、怒りを抑え、精進し、心を静める。
言い換えれば、最初の五つの実践はこの智慧を育てるための土台でもあるのです。

台風で、お墓参りに行きたくても行けない日もあります。
そんなときでも、ご先祖さまを思い、自宅で手を合わせることはできます。
そして、六波羅蜜の中から一つでも、日々の暮らしの中で実践してみる。
お彼岸は、今を生きている自分自身の歩みを見つめる七日間でもあります。
彼岸という岸は、どこか遠くにあるのではなく。
今日の小さな行いの、その先にあるのかもしれません。

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