引き続き蔦屋重三郎のおすすめ書籍を書いてみたいと思います。今回は小説とマンガです。
1、「蔦重の教え」車浮代 著 双葉文庫
私はこの本を読んで「蔦屋重三郎がなぜ大河ドラマの主人公に選ばれたのか」がわかったよう気がしました。現代人の主人公が江戸時代にタイムスリップして蔦重に会い、色んな出来事に巻き込まる「実用エンタメ小説」。ストーリーの中には深い時代考証があって、蔦重の人となりや江戸の人々の風俗と感性が魅力的に描かれる、江戸文化が一杯に詰め込まれたような小説です。そして何よりもこの本の骨子はタイトルの通り「蔦重の処世術」、「江戸人の気遣いや生きる知恵」を通して現代人が抱える悩みにすっきりとした新たな視点を与えてくれるという、蔦屋重三郎の魅力に触れるのにまず一番におすすめしたい作品と思います。
(著者 車浮代さんの新作「蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人」php文庫も発売されています。)
2、「稀代の本屋 蔦屋重三郎」増田晶文 著 草思社文庫
私が一番初めに読んだ蔦重の本で、時代考証に忠実な本格派の時代小説と思いました。私が勝手に持っていた蔦重のイメージが「べらんめい」「粋な江戸っ子」みたいなもので、この小説を読んで「真面目っぽい、ビジネスマンみたいな人だな」と最初ちょっと違和感がありました。が、歴史人増刊号に載っていた蔦重研究の第一人者 鈴木俊幸さんのインタビューに「蔦重の実像は真面目な商売人、華やかな出版プロデューサー的な側面に注目しすぎると本質を見落とすのでは」とあり目から鱗。この本に書かれている蔦重の姿が実像に近いのかもと興味深く改めて読み直しています。杉浦日向子さんの作品にも似た凛とした江戸の空気と品の良さが感じられる素敵な小説です。
3、「江戸の蔦屋さん(1)(2)」桐丸ゆい 著 まんがタイムコミックス
4コママンガなんですが、この本すごく好きなんです。面白おかしく書いてあってフィクションなのかと思うと大概実際にあったことで驚いたり、マンガなので当時の様子が「こんな感じだったのかな」と優しいタッチの絵から伝わってきます。何よりも作者の方の「蔦重、江戸が本当に好きなんだろうな」というのが感じられる何かほろっとさせられるような暖かい気持ちになるマンガです。
3冊とも大河ドラマのニュースで蔦屋重三郎に興味を持たれた皆様に読んでもらいたいおすすめの本です。よろしくお願い致します。