【京都府】悠久の歴史。哀調帯びる旋律…篳篥(本山本満寺)

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先日、京都の本山に行って参りました。
 
雅楽で使用される、『篳篥』(ひちりき)という管楽器を、師匠について習練することになりました。
所謂ダブルリードの縦笛で、葦で作った臚舌(ろぜつ)というリードを、長さ18㎝ほどの竹製の管に挿して音を奏でます。

50の手習いです。20代のお上人とご一緒ですが、覚えがとても早く、音感も正確です。
英断か、無謀か…期待と後悔が交錯します。
「ここにアップすることで、退路を断つ!」との思いから、挫折して恥をかかないようHPに綴っています(笑)
 
「音を出せなきゃ始まらない」と、京都に通い始める前に、専門書やYouTubeを見て、暇があれば篳篥を取って、音を出すことに専念しました。でも、この小さな管楽器がなかなか手強い。音色はとても不安定で、肺活量も必要です。熟練者が奏でる、力強くて、その一方で哀調を帯びるような旋律は夢のまた夢(涙)
渋滞の車中で篳篥を取り出し、「これでもか~」と吹いていたら、隣の車のご婦人と目が合ってしまいました。ご婦人は、リスが食べ物をめいっぱい頬張っているような無防備な私の顔を、しばらく正視した後、両手で顔を覆い、ダッシュボードに突っ伏して、プルプルと震えていらっしゃいました…
 
しかし実際の習練は、イメージしていたものとはずいぶん異なりました。
カタカナ(仮名譜)と、漢数字や記号(本譜)のようなものが書かれた篳篥の譜面を渡され、カタカナの部分をしっかりと声を出して歌うことから始まりました。
先ずは、この『唱歌』(しょうが)という習練を、楽器を持たないで師匠を真似てひたすら歌います。唱歌で正しく楽曲を丸暗記してから、楽器の練習に入るんですね。
 
初日は、『越天楽』(えてんらく)という有名な楽曲の唱歌を教わりました。
手で膝の上と横を叩きながら拍子を取り、師匠について歌います。十二律の概念や塩梅(えんばい)など、声明にも通じる部分もありますが、ゆったりとしたリズムの中にも様々な細かな決まりごとがあって一筋縄ではいきません。
しばらくして、少しは上達して、雅楽のお話を僅かでも語れるようになりましたら、またご報告します…
 
 
雅楽は、5世紀頃から朝鮮半島や中国大陸などからもたらされた音楽や舞が、日本古来のものと融合して、10世紀頃(平安時代)にはその形態がほぼ完成していました。
そしてその伝承は、「口伝」と言って、師匠から弟子へと、口頭で千数百年前から現在にまで伝えられているのです。
古来より、宗教と音楽は密接な関係にあり、法華経の方便品第二や法師品第十にも、「簫」「笛」「琴」「箜篌」「琵琶」「鐃」「銅焔」「鼓」といった楽器名が多数登場しています。
 
【参考資料】道友社「雅楽を楽しむ」 雅楽.TV(Hokke.TV) 日蓮宗事典
 
「鵜殿ヨシ原へ!」

「京都府 瑞光寺より春鶯傳 遊声」

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