仏前結婚式

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先日9月5日に、管区寺院の妙圓寺様にて仏前結婚式が執り行われました。新婦は私のはとこ(また従兄)にあたります。
管区内外より、立本寺上田日瑞貫首猊下をはじめ、大変多くの皆様にお集まりいただき、たくさんの温かいお言葉を頂戴して、親族一同唯々感謝の気持ちでいっぱいでした。
私の祖父と、大叔父である妙圓寺の先代が瓜二つの双子であり、お二人共に僧侶であったため、幼かった頃の私はよく混乱しました。コピーの様なお二人が、庭先で立ち話をされているところに遭遇すると、私は何かキツネにつままれた様な気持ちで、お二人をボーッと見上げていました。そんな笑い話が幾つもあります。
妙圓寺の御住職にも、幼少の頃より本当に可愛がっていただきました。中学校の帰り校門下でバッタリ会い、呉服屋さんの向いの喫茶店で、生まれて初めてのスパゲティナポリタンをご馳走していただきました。「校則違反」をしているという罪悪感と、ちょっと「不良」しちゃっているという高揚感を感じながら食べたことを、今でも鮮明に覚えています(^^;
そんな風にして、古くから親しくお付き合いをさせていただいている妙圓寺の御息女と私は親戚関係にある訳ですが、年齢差が随分ありましたし、私は高校を卒業して以来故郷を長く離れておりましたので、ほとんど日常的な接点はなく、会って話をする機会もありませんでした。それが6年ほど前に私が自坊に戻り、こちらでの生活がスタートしてからは、最初はFBのやり取りから始まり、実際にお会いしてお話する機会も増えました。音楽的な才能に溢れ、感性豊かで、そして「慈しみ」という名前の通り、誰に対しても面倒見の良い、多くの後輩に慕われるようなそんな彼女の優しさを感じます。一緒に過ごしていて、楽しくて、元気を与えてくれる様な存在ではなかろうかという印象でした。
彼女が結婚すると聞いた時、お相手を伺い私は驚きました。
北海道余市町の誠諦寺(じょうたいじ)様は、新郎が随身されていたお寺なんですが、御住職であられる佐々木信教(しんきょう)上人の老人福祉への取り組みに対して、私は常々深い関心を持っていたからです。「お檀家さん回りは、まさに訪問看護というべきものではないか」というお考えを持たれ、今から20年以上も前に、20代半ばの若さで「延寿園」を立ち上げられたその行動力と洞察力に、強い衝撃と大きな影響を受けていたのです。
私が神奈川の医療施設で働いていた頃、訪問看護を行う看護師さんについて、患者さんのお家を回っていたので、「独居老人」や「老老介護」の現状を目の当たりにして来ました。自宅での療養生活は、病院で考えるような単純なものではなく、現場でなければ見出せない様々な問題をはらんでいました。今でこそ介護保険が施行され、多種多様な社会資源が「自立支援のためのサービス」という名の下に積極的に導入されていますが、佐々木上人は過酷な行を積み重ねられながら、これらの難問と対峙され、地域に根差す素晴らしい施設を次々と立ち上げられた功績に心よりの敬意を表すと共に、師匠の下で「真の介護力」を培われた新郎に対しても、限りない可能性を感じています。
また、法人の福祉事業を支えケアマネージャーでもある飯田上人御夫妻様とも、福祉について見識の広いお話を伺うことが出来てとても刺激を受けました。ありがとうございました。
午前の式中、列席者全員で拝読した日蓮聖人のお言葉(兄弟抄)には、大変感動しました。心が震えました。僭越ながら、この記念すべき新しい門出に当たり、私が大切にしている言葉を新郎新婦に贈りました。
『たばねられた三本の矢が折れにくいのは、それが三本だからではない。たばねられているせいでもない。どの矢もまっすぐであるからだ。曲がった矢なら五本、六本たばねても、踏めばすぐ折れる。しぶといエネルギーは、まっすぐに貫いているものの中に宿る。』
幼い頃の新婦を知っている私にとっては、白無垢の彼女を見て、こんなに成長したのか…と感慨深いものがありましたが、御列席の皆様にとってはまだまだ成長過程に過ぎず、二人がこうしてこの日を迎えられたのは、多くの人の支えがあったからこそだと思います。これからも二人を見守り、良き道へと導いてくださいますよう、お願い申し上げます。そして私達で新郎を盛り立てて参りますので、北海道のご両親様におかれましてはどうぞご心配なきようにお願い致します。
温かいお心で二人の門出を御祝い下さいました、上田日瑞貫首猊下、森慶典豊能宗務所長様、式長をお努め下さいました真如寺植田観樹僧正、並びにご媒酌の労をお取り下さいました圓珠寺山下僧正御夫妻様、管区内外の御寺院各聖の皆様、誠諦寺佐々木御住職様、御多忙中遠近よりお越しいただきました関係各位の皆様方に改めて感謝を申し上げます。
桑木茂光拝

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