今回の涌出品は、お釈迦さまが私たちの世界である娑婆世界の弟子たちに、法華経の布教をのぞまれました。弟子たちが娑婆世界での布教をためらっていると、法華経の布教方法を説かれた後から始まります。
娑婆世界での法華経布教をためらう弟子たちにたいし、他の世界より娑婆世界に来ていた菩薩さまたちがお釈迦さまに、娑婆世界での法華経布教を申し出ます。しかし、お釈迦さまは、その申し出を断り「私が亡くなった後、法華経を布教するたくさんの菩薩がいる」と言われるのです。
その時に地面が振動し割れ、その裂け目より数え切れないほどの菩薩さまが涌き出でてきます。その菩薩を地涌の菩薩といい、その上首は、上行菩薩、無辺行菩薩、浄行菩薩、安立行菩薩といいます。地涌の菩薩は光り輝き、お釈迦さまに劣らぬほど立派でありました。
弥勒菩薩さまがお釈迦さまに、地涌の菩薩が何者かを質問します。するとお釈迦さまは「地涌の菩薩はお釈迦さまの遠い昔からの弟子であり、娑婆世界で修行を重ねてきた」と答えられます。すると弥勒菩薩は「お釈迦さまが成佛されて四十余年。その間では地涌の菩薩を弟子にしたことを聞いたことがなく、また人数も指導できるはずがないほど多い。このままではお釈迦さまに疑念を持つという罪を負ってしまいます。どうぞ疑念を晴らしてください」とお願いされて湧出品は終わります。
大変困っている時に「代わりにしましょうか」と申し出てもらえれば「お願いします」と言ってしまいます。娑婆世界の弟子たちが布教をためらっていると、他の世界の菩薩さまたちが「代わりに布教をしましょうか」と申し出たわけです。しかしお釈迦さまは、他の世界の菩薩さまたちの申し出を断られるのです。娑婆世界の弟子は、他の世界の菩薩に代わってもらえなくなったのです。