宗門においての諸宗教対話の先師
藤井日静猊下
昭和40年6月、世界連邦世界大会(於サンフランシスコ)にて「平和のための道義とその実践について」を講演。人類の理想を実現するためには、民族的・国家的・イデオロギー的、あるいは宗教的自我を超越した人間形成が全体不可欠であり、各宗教が確執を去って対話を進めるべきだと訴えられた。これにより世界連邦協会ないに宗教委員会が設置されることとなる。
昭和44年8月21日初めての世界連邦平和促進宗教者大会が身延山にて開催され大会会長を務められた。世界中から各宗各派の代表約2千人が共通の理想実現のため一堂に会し真摯な議論を展開した。
大会宣言(要旨)
ここ身延山において、われわれ宗教者は一堂に会し、諸宗教共通の広場を開発し、宗教協力の実を示すことを得た。まことに未曽有のことであり、新しい歴史をつくるものである。われわれはここに、世界連邦の方式による恒久平和への道を実践することを誓うとともに、これに協力するよう全世界の善意の人々に呼びかける。
中濃教篤上人
反戦運動・原水爆禁止運動・人権に関する平和活動のなかで諸宗教との対話による実践を行った人物。
昭和21年9月結成の「仏教社会主義同盟」に参加したことを機に仏教運動家の妹尾義郎とともに伝統仏教教団の革新運動に関わる。
昭和26年の「仏教者平和懇談会」への参加以降は、「日中仏教交流会」や「日本宗教者平和協議会」、「アジア仏教徒平和会議日本センター」、「核兵器廃絶をめざすNGO日本宗教者連絡会議」といった団体のなかで、積極的に諸宗教の対話による平和活動を進めていった。
同時にその活動の志は、世界立正平和運動本部(現代宗教研究所)、人権対策室など宗門内部への貢献という形で還元された。
当会では、中濃上人の超宗派的な活動と、日蓮宗僧侶・宗門人であるとの自覚の両立の姿勢を評価し、当会の掲げる三本柱(国際交流・国際協力・宗教対話)の実践者として、また仏教界・宗教界・宗門をつなぐ先人として、「日蓮宗宗教対話史」の歴史を形成した人物と捉えている。
参考:
・大谷栄一編(2019)「戦後日本の宗教者平和運動のトランスナショナル・ヒストリー研究(平成28~30年度JSPS科研費成果報告書)」、佛教大学社会学部大谷研究室
・大谷栄一・戸田教敞編(2020)「中野教篤資料目録」、戦後日本の宗教者平和運動のトランスナショナル・ヒストリー研究プロジェクト
竹内祥起上人
昭和56年(1981)より平成22年(2010)までの30年間、毎年「国際永久平和祈念祭典」を開催。毎回約1500名の市民参加により、祈りと供養の儀式を毎回各宗教が交代て勤め、諸宗教対話とそれに関するシンポジウムを行う。全て自ら資金を投じ総監督を務めた。
平成12年、万国博覧会EXPO国際フォーラム2000(於ドイツハノーファー)にて「対話と統合の原理」と題しシンポジウムを開催。
あわせてドイツに諸宗教対話交流センターとして大聖恩寺を開山。
諸宗教対話における理論の要となる「統合」の研究を目的とする統合学術国際研究所を日本とドイツに開く。初代所長池田義昭京都大学文学博士、2代目所長山脇直司東京大学名誉教授が務めた。
平成18年より諸宗教対話フォーラムを開催。毎年専門家を招いて諸宗教対話に関する宗教者と市民のためのフォーラムを開催。
2014年バチカン主催の国際諸宗教会議にて講演。
2015年ヨーロッパ科学芸術アカデミー正会員となる。
ほか、世界各地で開催される諸宗教対話に参加講演を行う。
シュテフェンス祥馨法尼
神戸大阪で声楽家として育ち単身渡独しオペラ歌手として舞台に立つと同時に父親のビジネスを手伝い、また自らも輸出入の事業に取り組む、そのドイツ風土に長け人との縁を深めた経験が、ハノーファー万博でのシンポジウムと大法要の実現を支え、檀家や信者を求めるのではなく、諸宗教対話交流センターとして建立されたドイツ大聖恩寺は自らの私財を提供し、身延山91世日光猊下と師匠への報恩とした。
師匠竹内祥起上人の講演に女性部門の演者として登壇する他、世界各地で行われる諸宗教対話に自ら登壇し実践を重ねている。
バチカン教皇庁諸宗教対話評議会はもちろんのこと、散逸構造理論でノーベル賞を受賞したイリヤプリゴジン先生をはじめ、著名な学者、宗教者と師匠のご縁を結んだ。
平和祭典にて毎年催される音楽法要の質の高さも法尼のよしみで協力する専門家によって構成され後世に残る音楽祭典が毎年生まれている。
中でも特に著名な音楽家ペンダレッキー先生はポーランド出身であのバチカンローマ教皇ヨハネパウロ2世の親友。司教と作曲家の互いの立場を生かし、プロデューサーと作曲をそれぞれ担当して演劇舞台を制作し、教会で信者教化啓蒙を目的として数々上演した。
※他、諸宗教対話活動に取り組まれた方がありましたら、ぜひご連絡ください。