だんしんきょう 平成30年 3月号

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開催日:2018年03月01日

石川 俊幸 氏
全国檀信徒協議会常任委員
山梨県南アルプス市法音寺筆頭総代
昭和8年8月11日生まれ
趣味:陶芸、読書

 『今昔物語』にこんな話があります。“ある時、帝釈天がみすぼらしい老人に姿を変え、ウサギ、キツネ、サルに食べ物をこうた。サルはクリやカキを集め、キツネは魚などを持ってきて老人を養った。ウサギにはそんな力がないため「この身を焼いて食べてください」と火中に身を投じた。ウサギを哀れんだ帝釈天は世の中のすべての人に見えるように月に移しかえたという。“
 この話を作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが、仏教の教え「利他」を例える本『月のうさぎ』にし、評判を呼んでいるそうです。「己を忘れ他を利するこれ慈悲の極みなり」。今の世に無縁かと思われるこのことが、東日本大震災の折には、現実として人びとの心を揺さぶりました。危険をかえりみずにマイクを通して避難を呼びかけて帰らぬ人となった女性をはじめ、自分のことを二の次にして行動した人は枚挙にいとまがありません。このことが人の心を動かし、大震災を契機に「利他」を説く仏教への関心が高まったと言われています。人が極限まで追い込まれた時、心の奥底に潜在していた仏心が顕在化するのでしょう。自分の「いのち」も他人の「いのち」も同じように尊重するのが人間の本来の姿なのです。宗門運動のスローガン「いのちに合掌」には、みんなでそんな姿を取り戻そうという願いが込められているのだと思います。
 日蓮聖人降誕八百年を目前にして各教区それぞれ慶讃行事が予定されておりますが、その先陣を切って昨年9月28日、山静教区記念大会が開催されました。僧侶檀信徒約1千人が総本山身延山久遠寺に集まり、熱気に包まれる中「管長猊下御親修慶讃音楽大法要」が盛大に営まれ、至福の時間を満喫することができました。「始めよければ終わりよし」。この慶事が宗門の限りない発展につながることを願わずにはおりません。ただ最近、身延山詣での団体が減少気味だと耳にし、少なからず淋しい気がいたします。原因はいろいろあると思いますが、現実の問題として対処せねばと思います。
 私は地元・山梨という恵まれた環境のため身延詣では特別のことではなく、日常生活そのものでありました。1時間足らずで行けるため、年間行事の初詣、節分会、七夕、お会式をはじめ、吟行、歴史探訪などの場としてもお山は絶好の地でした。ただそれは、信仰ということではなく、物見遊山的であったことは否定できません。数年前のお会式で、徳島県から来たご婦人の「私たちにとって身延山は一生に1度お参りできるかどうかの憧れの場所です。この感激を胸に、これからも信仰に精進してまいります」とう声を聞き、その言葉の重さにたいへん胸を打たれました。
 今は年に1~2回、輪番奉仕に参加しています。「誓いの言葉」の一節「輪番ご給仕の感激と悦びを日常生活の上に活かし社会の浄化に協力します」を胸に精進していきたいと思います。

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