2月25日、猿若祭二月大歌舞伎の千穐楽に中村勘九郎主演の『きらら浮世伝』を見に行ってきました。
「きらら浮世伝」は昭和63年に銀座セゾン劇場で先代の中村勘九郎(故十八世中村勘三郎)さんが蔦屋重三郎を演じた作品、37年ぶりの息子さんによる再演になります。当代勘九郎さんは公演の前にお墓参りにも来ていただきました(うちの奥さんが気付いて親しくお話しをさせて頂いたようです。ありがとうございました)。千穐楽にようやく時間ができて見に行く事ができました。
やっぱり直に見る歌舞伎、お芝居はいいなぁと改めて思いました。歌舞伎舞台は史実や時代考証とか細い部分より、主人公の生き様を勢いよく演じ切る痛快さが一番の魅力です。同じ蔦重でも横浜流星さんとはまた違う、弾けるような勘九郎さんの熱演で楽しく観劇しました。
お上に弾圧されても決してめげず、絵師や職工やライバルたちと喧嘩しぶつかりながらも結局は巻き込むように力をあわせる仲間のようになってしまう蔦重の魅力と、勘九郎さんや中村屋有縁の役者方(芝翫さん橋之助さんは先代勘九郎の義弟義甥、ドラマ鬼平役の中村隼人さんも父の中村錦之助と一緒に出ていました。縁故や繋がりを教えてもらうとより面白いです)大勢の脇役の役者さんまで一人ひとりを輝かせるような演出がとてもよかったです(舞台、大道具も雰囲気がありすごかった)。
蔦重のエネルギーの源は「本を作ることで吉原で辛い日々を忍ぶ遊女など頑張って生きる人々を喜ばせ力づけること」。ここはドラマと同じように描かれていて、蔦重に触れ一番心揺さぶられる大事な部分でありました。涙無くしては・・と音声ガイドの通りのラストシーン、満場の花吹雪、皆さんの熱演に感動しました(DVDなどで見返すことはできないのかな)。「舞台というのは感じるもの」、作者の横内謙介さんのブログがあり「きらら浮世伝」のことがよくわかります、ご覧になって頂ければと思います。
横内謙介diary「きらら浮世伝 歌舞伎座二月」
横内謙介diary「きららの稽古をして思った」
この猿若祭の由来は、江戸時代に公認された芝居小屋(中村座、市村座、森田座)猿若三座に因むものです(天保の改革で正法寺近くの浅草聖天町に移転)。中でも中村座は「江戸歌舞伎の発祥」最も権威ある劇場としてそこに連なる中村屋の皆さんと共に深い歴史が刻まれて参りました。昭和51年に「江戸歌舞伎三百五十年」として十七世中村勘三郎が興した「猿若祭」を、本年その孫である中村勘九郎が蔦重を演じられて挙行されたことを知るとより感慨深いものがありました。