昨年の10月ごろお寺に一本のお電話がありました。蔦屋重三郎について本を書いている作家の城島明彦様からで、ご自分の調べたところで不明の点(特に蔦屋家の歴代戒名や過去帳)のことについての問い合わせでした。
私はその時までうちの蔦屋家歴代墓碑に刻まれている14名の戒名について一部しか把握ができておらず、どうやって調べたらいいのかと困っていました。そうしたらそのお電話で城島さんが調べた資料をもとに大方の戒名が誰なのかを教えてくれて、驚いたのと嬉しいのと感謝の気持ちで2〜3時間ほどの長電話をしてしまいました。
城島さんは若造の住職にも関わらず、私に本当に親しくお話しをしてくださり、ご自分の執筆中の蔦重研究の成果を丁寧に教えていただきました。一番有り難かったのは、教えてもらった蔦屋家歴代の情報とうちの墓碑に刻んであるものとに違いがあることを私が残念に思っていると、「でもそういう違いから、蔦重探求の想像力が膨らんでたくさんの事が見つかってくるんじゃないですかね」と。災害で墓碑や過去帳を失った正法寺にとってとても力を頂く言葉で、その後図書館に通ってたくさんの史料を見つけることにつながりました。めでたく著作「江戸の仕掛け人 蔦屋重三郎」が発売された折には本をご恵送いただき、その後お寺にも来てくれてこれまた長い時間楽しくお話できたこととても嬉しかったです。
お会いした城島さんは、伺っていたお歳を全く感じない、穏やかで人を逸らさない明るいお人柄でいらっしゃいました。それは書かれた本にもそのまま表れていて、研究の成果とユニークな視点、蔦重への思いが合わさった城島さん独自の蔦重本になっていると思います。出版社ウェッジのウェブマガジン「ほんのひととき」にも関連記事が出ています。あわせてお読みくださいませ。
作家 城島明彦様 誠にありがとうございました。ご縁に感謝しております。
著作「江戸の仕掛け人 蔦屋重三郎」紹介ページ
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