8/15今夜は精霊流しでした

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みなさんこんばんは。今年のお盆は珍しく2日間雨が続きました。私の記憶では8月13日の川棚町はいつも大抵晴れていて、しかもものすごく暑い!といったイメージで、今年のように雨の中お盆の棚経を回るのは珍しいと思ったのですがどうでしょうか?
今年「常在寺」では11日から15日まで、お盆の棚経に伺いました。今年は珍しく遠方の初盆まわりも多くあり、11日は「長崎市内→西海町(にしうみ)→諫早市→小長井町→大村市→東彼杵町」とその日だけで車の走行距離メーターが200kmを超えました。これまた私の経験では珍しいことでした。
お盆中はノンストップでお経まわりをするので、まともにお昼ご飯を食べる暇がありません。常在寺の山務員はこの期間中「カロリーメイトゼリー」をチューーーーっと吸って30秒〜1分ほどでチャージ完了!時間を無駄にしない、できるだけお待たせしないような工夫であります。
副住職の私はほとんどが「初盆さま回り」担当でしたが、朝8時に回り始め、午後3時くらいに「その日の初盆さま回り」が終わるとすぐに、まだ回っている山務員の応援に駆けつけます。13日は「常在寺の祇園祭」を数百年に渡ってお世話して下さっている地区を手伝いに駆けつけました。
この地区は海岸沿いの漁師町で(大分漁師さんは少なくなった)なんとも言えぬ独特の雰囲気が漂っています。
狭い路地を抜けて家から家へトントン回り、ある路地の角に立つとふと「あの方」の姿が見えた気がしました。
26年前、私は高校1年生で初めて1人で「お盆の棚経」を回りました。小学生の頃、父の「お盆経」にくっついて回ったことはありましたが、私は剣道をやっていて、全国大会にまで行くほどのチームに所属し、夏休みなど当然のように毎日、しかも朝晩2回(!)練習だった関係もあってか、お寺の子としては遅い(?)「お盆経デビュー」でした。しかしひとりで回るのは初めての経験、しかも「70軒ものお家」を要領よく回るのは至難のわざ。不安でいっぱいでした。
名簿と赤ペンを握りしめ「次○○さんのお宅はどこでしょうか?」と不安そうに聞く私のことを心配して、「あの方=Sさん」は次のお宅まで歩いて付いてきてくれました。「どうも有難うございます。」と丁寧にお礼を言って、なんとか次のお宅の「棚経」を終え、次の家に向かおうとしてその家を出るとなんと「Sさん」は外で待っていてくれたのです!「次はどこね?」
そしてそれは「次のお宅」も「その次のお宅」も続いたのです。「Sさん」は「ちょっと姿が見えなくなったなぁ」と思うとまたすぐに現れ、何時間かたったあと、「Sさんのお宅」から大分離れた場所でも続きました。名簿の順序がおかしいと言っては順番を丁寧に書き直してもくれました。
一昨日の13日、「Sさんの姿」が見えたある路地の角とは「Sさんのお宅」のちょうど真裏だったのです。次は「Sさん」のお宅でした。
「ごめんくださーい」と大きな声で言いましたが誰もいらっしゃいません。お経机の上にお盆にのせた「お布施」がおいてあります。これは棚経に無関心で留守にしている訳では決してなく、ちょっと出かけた間に、いつでも「棚経」が上げてもらえるようにという心遣いなのです。これもこの地区ならではでしょうか?
誰も居ない中でお灯明を灯し、お線香を焚き、お仏壇の前でお経を読み始めました。鴨居の上には凜とした姿の「Sさん」の写真が飾ってあります。
お経を読んでいると、低音ですごく特徴のある「Sさん」の声が頭の中で聞こえてきました。涙があふれそうになり、涙声になりそうになってしまいましたが、何とか必死にこらえて「頭の中のSさんの声」とお題目を唱和しました。
その時、しみじみと「あぁ、今、ここに帰ってこられたんだなぁ」と感じました。「Sさん」は私が家を空けている間の平成21年にお亡くなりになったのです。
今夜は「精霊流し」でした。お寺を夜9時半に出発して、平島漁港まで40分ほどうちわ太鼓を叩きながらの唱題行脚。先頭を行く常在寺の「精霊船」に連なり、たくさんの「新盆会ご遺族」の方々が行列して歩かれました。去年もそうでしたが、この行脚中も何故か何度か涙が出そうになりました。いろんな思いを巡らしながらうちわ太鼓を叩き、歩きました。最近毎度のことですが、涙もろくて困ります。
小船から流されるたくさんの灯篭は今年もとても美しかったとのことです。私は親船に乗って沖へ出て、お経を読みながらたくさんの「精霊札」を流すので、いつも灯篭が流れていく様子を見ることができないのです。いつも中心になって「常在寺の精霊流し」を手伝って下さる平島郷有志他「常信会」の皆様、本当に毎年毎年有難うございます。
「常信会」のみなさんのお陰様で、こちらに帰ってこられていた「Sさん」はじめ、檀家のみなさんのご先祖、そしてありとあらゆる「精霊さま」が無事帰路につかれたことと思います。南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経。南無妙法蓮華経。
泰通記

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