「お年玉とぜんざい」

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 あまり気にしたことがない方も多いと思い、お正月の行事について書いてみました。

そもそもお正月の行事とはなんなのか?

実は「歳神さま」という神さまを「家にお迎えして、もてなし、見送る」行事をお正月ではやっているのです。

◎歳神さま
「歳神さま」は神道の神さまでその年の豊作や幸福を司る神さまです。
昔から新年になると各家々に幸せをもたらすために山から降りてくると言われてきました。
また、古来から農耕を行ってきた日本人にとって、穀物が取れる事は死活問題でした。
歳神さまの「とし」は稲が語源であることから、歳神さまを稲の豊作をもたらす神さまという説もあります。
さらに、ご先祖さまが新年になると歳神さまとして家に来て、子孫を守ってくれるという説もあります。
つまり、歳神さまとは、神道の八百万の神、農耕の神様、ご先祖さまの霊をくっつけたような存在で、いずれにしてもその家に豊作と幸福をもたらす神さまであることは共通しているようです。

◎お年玉
 お迎えした歳神さまを家のどこにいてもらうのか。実は「鏡餅」が歳神さまの依り代となるのです。
この餅は単なる餅ではなく、「魂」を象徴するものなのです。
「魂」とは生命エネルギーのことで、歳神さまの御魂が宿った鏡餅は新年一年分の生命エネルギーが宿っています。
それを家の主(家長)が家族へ分け与えることを「お年玉」と言ったのです。
魂を分けるから「お年魂」とも書けますね。
今でこそお年玉はお金を与えることが当たり前ですが、実は新年を生き抜く力をつけることがお年玉の本来の意味だったのです。
ちなみに、そのお年玉を食べる料理が「お雑煮」というわけです。

◎ぜんざい
お雑煮と並んだお餅料理として、「ぜんざい」があります。実はこの「ぜんざい」は仏教から来ている言葉です。経典では「善哉」と書かれており、「善きかな」と訓読みできます。お釈迦さまが弟子たちにお説法をする中で、弟子たちによく質問をするのですが、弟子たちがその問いに対して意を得た答えを言うと、お釈迦さまは「善き哉、善き哉」と褒める時に出てきます。
「ぜんざい」は小豆と砂糖をふんだいに使い、その中に餅が入っているという料理です。今でこそ何ともない料理ですが、江戸時代の頃には最高級の贅沢品でした。そんな貴重な「ぜんざい」を食べた人は「すごく美味しい」という意味で「善哉」と言ったのではないかと言われています。
 
◎欲令衆
この「善哉」という言葉は檀信徒がお読みしている「欲令衆」の一説に書かれています。
欲令衆とは「欲令衆生開仏知見」(衆生をして仏知見を開かしめんと欲す)から取ったもので、妙法蓮華経に出て来る4つのタイトルから構成されています。
これは、日蓮聖人が妙法蓮華経のエッセンスをまとめられたものです。
 
●方便品第二・・・お釈迦さまがこの世に出現した理由。
(諸仏世尊は、衆生をして〜)

●譬喩品第三・・・仏と私たちとの深い因縁を明かす。
世界と私たちの関係。
(三界は安きことなし〜)

●法師品第十・・・この法を持つ一切衆生を仏は救い守ることを
述べる。
(我化の四衆 比丘比丘尼〜)

●見宝塔品第十一・・・この法こそお釈迦さまの真実の教えで
あることの証明。
(爾の時に宝塔の中より〜)
 
「善哉」という言葉は最後の「見宝塔品第十一」で出てきます。
ここで出てくる「多宝如来」という仏さまは、お釈迦様が悟りを開くよりも前に悟りを開いた「過去仏」の一仏とされており、東方にある「宝浄世界」の教主とされています。
過去世において成仏して滅度した後、法華経が説かれる場所には、自らの全身を安置した宝塔が出現することを誓願した仏さまです。
この娑婆世界でまさにいま法華経の教えを説こうお釈迦さまに対して、多宝如来はこの娑婆世界に出現し、お釈迦さまに対して「善き哉、善き哉」と褒め称えているのです。
 
皆さまも今年1年、たくさんの人だけでなく、たくさんの神さま仏さまから「善哉」(いいね!)が頂けるよう精進しましょう!

 

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